営業マネージャーの仕事と役割⑦では進捗管理について記載をしてきました。理論上は目標設定から進捗管理までを正しく行うことができれば単年の目標達成に近づいていくことになります。
もちろん現実の世界はそれほど単純ではなく、多くの複雑な要素が絡み合い、理論理屈では説明できないような事象も発生します。しかし、しっかりと目標達成までのプロセスを理解していることは、確実に目標達成の確率を高めることができます。
そして、営業マネージャーは目標達成を1回だけではなく、何度も何度も、毎年達成をしていくことが求められます。
では、今まで記載をしてきた目標達成までのプロセスと、次の目標を達成するためのプロセスは、どのように関係しているのでしょうか?
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1.目標達成と次なる目標設定
ここでは、1つの目標設定を達成するためのプロセスと、次の目標を達成するためのプロセスの現実的な関係性を見ていきたいと思います。
1-1.目標達成プロセスのオーバーラップ
これは多くの経営者や管理者が知っている、気づいていることですが、今と次の目標達成プロセスはオーバーラップして(重なって)います。
ある目標を設定しそれを達成するためのプロセスを踏みます。そしてその目標達成を確認してから、次の目標を設定するのかというと実際にはそれをしてはいけませんし、それを行うと次の目標達成に対する動き出し(計画実行)が遅くなってしまいます。なぜでしょうか?
それは、ビジネスの世界は時間が常に連続しているからです。日本では3月末決算の企業が多くありますが、例えば期中の7月31日から8月1日にかけての時間と、期が変わる3月31日から4月1日にかけての時間は何も違いません。同じです。
では、3月31日から4月1日に期が変わるからといって、3月31日の夕方にその期の目標達成率を確認し、一晩で来期の目標設定・目標共有・計画立案を行って、4月1日から始まる計画実行に備えるのでしょうか?
それは不可能な話です。もし仮にそれを行ったとしても、明らかにそのプロセスは不完全になるでしょう。
例えば、一部のプロスポーツやウィンタースポーツのようなオンシーズンが1年のうちの限られた時間の世界では、その年はその年の目標達成に注力し、終わったら次の期のことを考えるということも可能なのかもしれません。
しかし、基本的にビジネスの世界は、オンシーズン・オフシーズンというものが存在せず、常にオンシーズンということが一般的です。
4月1日に計画実行をスタートしようとすると、目標設定・目標共有・計画立案はそれよりも前にスタートしなければいけません。4月1日に間に合わせようとすると、遅くとも3ヵ月前(1月1日)、理想的には6ヵ月前(10月1日)にスタートをしたいところです。それだけ、目標設定・目標共有・計画立案を正しく行おうとすると時間を要するわけです。
「その期の結果がどうなるかも分からないのに、次の期の目標設定を始めなければいけないのか?」と言う人もいるかもしれません。答えは「その通り」です。
実際には、その期の結果がいくつか考えられるのであれば、それに合わせていくつかのパターンを想定しながら考えることなども必要になってきます。
確実に言えることは、目標達成(あるいは目標未達成)を見てから次の目標設定をしたのでは遅いということです。
しかし、経営者をはじめとして管理者の面々が、その期が終わる3ヵ月を切っても来期のことを考えることができず、目の前の目標や業務に追われてしまっている企業は実際には数多く存在します。
1-2.オーバーラップ期間の階層ごとの役割
今期の計画実行や進捗管理をしながら、来期の目標設定や計画立案を行うオーバーラップ期間は、階層ごとに以下の役割を持つことが理想的です。
- 経営者・・・来期の目標設定と計画立案のことを考える
- 管理者・・・今期の目標達成のことと、来期の目標設定と計画立案のことを考える
- 担当者・・・今期の目標達成のことを考える
管理者は今期の目標達成をメンバーと共に追いつつ、来期の目標設定と計画立案を経営者と共に考えなければいけません。役割が多いように思えますが、これも管理者の大切な役割の1つです。もちろん管理者を兼任している経営者は、これを行わなければなりません。
1-3.中期経営計画のオーバーラップ
前項までは単年のことを想定していますが、5年の中期経営計画についても同様のことが言えます。
どういうことかと言うと、例えば5年の中期経営計画を作った後、次の5年の中期経営計画を作るまでには、5年を待つことはないということです。実際には3年~4年経った時には、5年の計画を作り直す必要が出てきます。
単年に比べて時間軸は長いですが、意味合い的には同じです。5年が終わった後に次の5年を作り始めるのでは遅くなり、ビジネスにおいて戦略に基づいた行動ができない空白の時間を生み出してしまうことになります。
2.営業マネージャーとして求められる役割・能力
ここからは、2つの目標達成プロセスのオーバーラップ期間において、営業マネージャーをはじめとする管理者に求められる役割や能力について記載をしていきます。
2-1.今期の目標達成
オーバーラップ期間中に求められる管理者の役割の1つは「今期の目標達成」です。
この「営業マネージャーの仕事と役割」のシリーズでは何度か同じようなことを書いているのですが、営業マネージャーに求められる役割の1つは「今期の目標達成」だと書くと、皆さまはどう思うでしょうか?
そうです。そんなことは当たり前のことなのです!営業分野やマネジメント分野には、文字で書くと当たり前、でも多くの人ができていないことが数多くあります。
しかし、このオーバーラップ期間に突入すると、途端に今期の目標達成をあきらめたり、その活動を止める管理者が数多く存在するのです。
なぜそのようなことが起きてしまうのでしょうか?
それは、今期の目標達成が苦しい原因を目標設定や計画立案の精度が悪かったせいにしたいのです。進捗管理の原則のうち、いくつかを思い出してみます。
- 目指すべき結果目標は変えない
- 計画は具体的な改善策立案のもとに修正をしていく
つまり、結果目標は変えることは許されず、計画についても当初立てた計画がベースになり、大幅な変更ができるわけではありません。
特に期の後半になってくると、具体的改善策もある程度打ってきているので、手段的そして時間的な観点からも目標達成への厳しさが明らかになってきていたりします。
そんな中で、「来期の目標設定や計画立案を始めよう」という話が出てくると、待ってましたとばかりそこにだけ力を入れ始めて、今期を達成するという取り組みが弱くなってしまうのです。
来期の目標設定や計画立案に力を入れることは管理者として必要です。しかし、それによって、「今期の目標達成」への取り組みが弱くなってしまってはいけません。
チームメンバーや担当者は今期の目標達成に向けて引き続き頑張って動いています。そこへの取り組みの力を管理者が弱めることは、現場の孤立やモチベーション低下にも繋がりかねません。
2-2.「戦略」と「戦術」の2つの時間軸を行き来する
特に、今期の目標達成を目指して計画実行と進捗管理に力を入れている時に、中期経営計画の立案に参加することも営業マネージャーは求められます。
その時は、「戦略」と「戦術」の2つの時間軸をしっかりと棲み分けて、行き来する必要があります。戦略の時間軸とは3年~5年、戦術の時間軸とは1年です。
営業マネージャーをはじめとした管理者の中には、この2つの時間軸を混同してしまっている人が多くいます。
- その取り組みは1年で行うには難しく、3年~5年かかるのでは?
- その取り組みは3年~5年の時間軸で話しているが、1年でも行うことができるのでは?
会議の中でこのような疑問を感じるときも少なくありません。
「戦略」と「戦術」の時間の行き来は簡単なことではありません。特に目の前の目標達成を追っていると、戦略的な時間軸に自らの頭をシフトすることはとても難しいことです。
しかし、それが求められるのが管理者であり、それに果敢にチャレンジしていくことが管理者の役割です。
2-3.管理者の二面性を正しく活用する
特に2つの目標達成のプロセスのオーバーラップ期間中は、管理者には良くも悪くも二面性が発生します。
管理者は一方では経営者の方を向いて、5年先や来期の話をしながら、もう一方ではメンバー・担当者の方を向いて、今期の目標達成について一緒に注力をします。
ここには、事案によっては二面性が発生します。例えば、現場である商品の目標達成のため日々訪問と提案を繰り返している。
しかし、来期は中期経営計画の観点からこの商品をラインアップから外そうという話が持ち上がっている。
もしマネージャーがこのことを現場に伝えたら日々の目標達成へのモチベーションに大きな影響を与えかねない。だから、この計画については今は絶対に現場には話さないようにしなければならない、というような内容です。
管理者はこういったことにも細心の注意を払いながら、今期の目標達成と来期の目標設定・計画立案の話をしていかなければいけません。
3.まとめ
ここでは目標達成と次なる目標設定ということで、2つの目標達成プロセスのオーバーラップとそこに発生する営業マネージャーの役割やスキルなどを記載してきました。今回記載をした内容もまた営業マネージャーをはじめとした管理者に求められるとても大切な役割やスキルです。
ここまで「営業マネージャーの仕事と役割」と題して①~⑧にかけて記載をしてきましたが、営業マネージャーをはじめとした管理者に求められる役割やスキルは本当に多岐に渡ります。
このような管理者の仕事や役割をすべて完璧にこなすことができる管理者は、ほぼ存在しないと言ってもよいと思います。
そもそも中小企業を中心に、「管理者」と呼べる人材は圧倒的に不足しています。そして、管理者と言われる人でも、それぞれに得意と不得意があり、管理者に求められる仕事でも苦手としているものがある人が大半です。
しかし、営業マネージャー・管理者という仕事は、その中でも果敢に行っていかなければなりません。得意は伸ばし、苦手は克服し、1つでも多く営業マネージャーとしての仕事や役割を全うできるよう努力を続けていきましょう。