前回までは営業マネージャーの仕事と役割の中で、「目標共有」まで記載をしていきました。目標設定・目標共有まで行うことができたら、次はその目標を達成するための「計画立案」の段階に入ります。
目標達成ができていない組織や個人が持つ原因が、この「計画立案」にあることも数多くあります。
計画立案を正しく行うことができれば、目標達成の確率を大幅に高めることができます。
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1.「計画立案」の主な失敗例
まずここでは、正しい計画立案の前に、主な計画立案の失敗事例を紹介します。
1-1.課題解決なき計画
ある目標設定があり、その目標を達成する計画を立てます。その計画がどういうものかを聞くと、その目標を達成するための訪問や提案を頑張ってやっていくんです、という類のものを「計画」と言っている組織や個人が多くあります。
少し分かりづらいので野球の例を出します。上記の内容というのは、ある打者が今年目標としている打率やホームラン数を達成するために、日々試合に出て打席に立ち頑張って打つんです、と言っていることと同じです。
どういうことかと言うと、1回1回の打席の結果を向上したり確率を上げるために、新しい技術を習得したり、悪いクセを直したり、筋力をアップしたり、道具の改善をしたりすることをせずに、そういったものは現在のレベルのままで打席に立ち続ける、ということを表しています。では、この打者は昨年に比べて今年の成績は向上するのでしょうか?
もしこの打者の目標設定が、昨年と同様の数字であるならばこのような方法でも良いかもしれません。しかし、そもそも目標設定というものは、現在の状況よりも頑張らなければ達成ができないところに設定されるものです。この打者が昨年よりも向上した成績を残すことは、一般的な感覚からはおそらく難しいと考えられます。
これはビジネスにおいて、そして営業分野においても同様のことが言えます。課題解決なき計画は、正しい計画(目標達成ができる計画)とは言えません。昨年と同じ実力で試合だけをしていては、昨年とほぼ同様の結果が出ることは明らかですし、もし相手がこちらのことを研究しこちらの手段に対して対策を立ててくれば、昨年よりも成果が減少する危険性もあります。
昨年よりも数値が上昇している目標を達成するためには、試合だけでなく技術・ツール・環境などの改善が必要です。目標達成のためのそういった課題解決の取り組みが計画に含まれているか?これはとても大切なポイントです。
1-2.フロントヘビー計画
次に計画立案で失敗するパターンで多いケースは「フロントヘビー計画」です。
前項から計画立案には課題解決が必要であることが分かりました。そこで目標達成のためのクリアをしたい課題をあげてみると、目標設定が高ければ高いほど、大小様々な課題が数多く出てくるものです。
これもやらなければいけない、あれもやる必要がある、それもできるならできたほうがいい、そういったものばかりです。そして、前向きで責任感が強い人ほど、そういった目標設定のためにクリアしたい課題を、計画の初期段階に大量に盛り込もうとする傾向があります。
フロントヘビー計画というのは、前(フロント)が重い(ヘビー)計画のことです。より正確に言うと、前が「重すぎる」計画のことです。
ある目標設定をして、一念発起取り組み始めたが、しばらくすると息切れしてしまった・・・という現象は多くがフロントヘビー計画によるものです。
実は課題解決を意識した計画立案を行うと、大概においてフロントヘビー計画になります。フロントヘビー計画になることは悪いことではなく、前向きで責任感が強い人ほど、ある意味では自然な計画立案です。
フロントヘビー計画において、大切なことは時間の概念です。計画初期の段階で前向きに様々なことに取り組むのはよいでしょう、しかし、そのための時間制限を考えていますか?ということになります。
誰もが共通していることに、時間は有限で決まっています。そして、フロントヘビー計画を防ぐために必ず考慮をしなければいけないことは、通常業務や日常業務の時間も考慮しなければいけないということです。
先ほどの野球の例で言うと、目標達成をするためには課題解決が必要なのですが、当然ですが試合にも出場しなければなりません。試合をしている時間は、練習やトレーニングに取り組めるのかというと、必ずしもそうではありません(もちろん実戦がその人の経験値向上や技術向上に結び付くということはありますが)。
1年間は試合に出場せず、課題解決だけに取り組めばできるようになることは多いかもしれません。しかしそれでは実力は向上するかもしれませんが、目標達成ができないことは明らかです。
通常業務や日常業務の時間も考慮したうえで、時間が考慮されていない「フロントヘビー計画」になっていないか?これも計画立案成功のための大切なポイントです。
1-3.計画のための計画
計画立案はとても大切であり大変な仕事です。計画立案をしている時は、計画立案に没頭しなければいけない時も少なくありません。
計画立案に没頭する時間が長くなると、いつしか計画のための計画立案になることがあります。
目標達成をするための計画立案であることを忘れてしまい、いつしかその計画を完成させることが目的となってしまうことがあります。
大概において、このような人の計画表というのはとても綺麗で整っているものです。そして、目標達成という観点から見るとどちらでもいいような調査や議論に、多くの時間を割く傾向も強くなります。
計画立案の直接の目的は、あくまでも目標達成のためです。目標達成をすることができるのであれば、必要以上の綺麗な計画表は不要なことも多く、結論が出ていない枝葉的な項目があっても、特に大きく問題視する必要もありません。
2.正しい「計画立案」の方法
前項までは、主な計画立案の失敗事例をあげてきました。これをチェックポイントとして計画立案を行うと、目標達成の確率を大きく高めることが可能です。
さらに以下には、正しい計画立案を行うにあたっての方法を記載していきます。
2-1.問題と課題
正しい計画立案を行うにあたって、ここで1つ定義をしておきたいことがあります。それは、「問題」と「課題」の違いです。日常的にはあまり区別しないで使うことも多いこの2つの言葉ですが、ここではそれぞれ下記のように定義をしたいと思います。
- 問題・・・事の大小に関わらず、今日優先的に解決しなければいけないこと
- 課題・・・今日解決しなくても特に困らないが、目標を達成するには解決しなければいけないこと。将来に問題となり得ること。
正しい計画立案(目標達成ができる計画立案)をするためには、この「問題」と「課題」の違いを頭において取り組む必要があります。
2-2.課題認識・課題形成
正しい計画立案のためには「課題解決」が必要です。「問題解決」ではありません。
そして、課題を解決するためには、課題が何なのか?ということを認識し形成しなければいけません。
現在の結果を継続するのであれば、特に課題解決は必要ないことが多いです。今できることをそのまま行い、問題が発生したならばその都度対処していけばいいからです。今できないことをできるようにする必要はありません。
目標設定が、現在の成り行きでは出すことができない位置に設定されるので、「課題」は発生します。基本的ですがこの概念は大切で、課題は単独で存在するのではなく、目標設定に連なって発生するものなのです。
ここで課題認識・課題形成(何が課題なのか?)という話が出るわけですが、ここでもう1つ重要なことは、目標達成のために解決しなければいけない課題は、今日いま現在は問題と認識されていないことが多い、ということです。
今出ている結果を出すのであれば、今のままでいいわけです。この結果を引き上げようとするから、今のままではダメになるわけです。でも、それは今は問題として顕在化していません。
だから、目標達成のために解決する課題というものは、今現在は問題として顕在化しておらず、目標を引き上げた時に発生した時に顕在化するであろうことを予測して、「課題」として認識・形成する必要があります。これが計画立案において大変難しいプロセスなのです。
今起きていないことを想像して課題として特定するわけですから、相当な想像力を必要とします(管理者は計画立案以外でも、様々な場面で想像力、頭の中で時間を進める能力、想像の世界だけで問題を起こし現実の世界では問題を起こさない能力、を発揮することが求められます)。これは通常業務・日常業務を中心に従事をしている担当者にはなかなかできないことであり、ここもまた管理者としてのとても大切な仕事となります。
2-3.課題の取捨選択
では、前項のことを意識して課題認識・形成をしていきます。目標設定は決して低くはないことが多いので、大概において認識・形成される課題も数多く発生することになります。
前述のフロントヘビー計画にならないためにも、この山積みされた課題をどうやって解決をしていくかを考えなければいけません。ここで大切となる概念が、課題の取捨選択であり、以下の2つの言葉で表現できます。
- 課題はすべて解決することはできません
- 課題はすべて解決する必要がありません
フロントヘビー計画のところでも書きましたが、課題解決には必ず時間制限が伴います。よって、課題が数多く発生したとしても、どちらにせよすべて解決することなど誰にもできないのです。
そして、幸いなことに課題はすべて解決する必要もありません。実は、目標達成のために解決が必要であるとあげた課題のうち、本当に目標達成に大きく寄与する課題はそのうちの2割~3割であることが大半です。
なので、7割~8割の「課題」は、実は解決されたとしても目標達成に大して貢献していない、ということが数多くあります。目標達成に貢献はしているのですが、その影響は少ないということです。
どうせすべて解決できないのだし、そもそも大きく寄与するものが2割~3割なのであれば、それがどの課題なのかを特定したら、残りの課題は捨ててしまう(こう書くと乱暴に見えますが、どちらにせよできないのだし、できたとしても効果が少ないです)ことが課題の正しい取捨選択です。当然その取捨選択を誤らないようによく考えなくてはいけませんが、多くの場合において解決すべき課題は2つ~3つであることが多いのです。
2-4.課題の解決策立案
課題を認識・形成し、その取捨選択もして2~3つの主だった課題に選択をしました。
ここで止まってしまっている組織や個人も多くあります。課題を取捨選択しただけでは課題は解決されず、解決のための具体策を打つ必要があります。
課題認識・形成、そして取捨選択までできていても、この解決策において有効なものが打てていない、方法が間違っている、立てた対策が実行ができない、となると課題は解決されません。
では有効な解決策を打つためにはどうすればいいのでしょうか?
有効な解決策を打つための方法は、一言で表すと「関連する事柄や解決事例の知識を増やす」ことです。
私たちがビジネスにおいて認識される課題は、過去にどこかで誰かが類似する課題に必ずと言っていいほど直面しています。そしてそこで解決が図られ、結果として解決をしたケースも多くあるはずです。
ということは、その事例を「知識」として知っていれば、いま自らが直面している課題に対して、有効な解決策を打つことができる可能性が飛躍的に高まることになります。
また、同様の課題の解決事例が直接的になかったとしても、関連する事項の知識や最新情報が頭に入っていれば、具体的な解決策を打ち出すことができる確率は高まります。
具体的な解決策に乏しいと感じた場合は、それに関連する知識や情報、類似課題の解決事例をいち早く収集することが、課題解決の具体策立案の近道となります。書籍、インターネット、セミナー、知人の経営者など、現在は情報収集手段においては豊富に存在します。
2-5.計画の共有の重要性
営業マネージャーの役割④の目標共有では、設定された目標を共有する方法を記載しています。
目標だけではなく、今回のテーマである計画も関係者と共有する必要があります。
計画を共有する考え方は目標共有の考え方と同様と言えます。
・計画を立案して伝える
・計画を立案して意見を求める
・計画立案から参加させる
この3つのうちのどれかを関係者の経験値やスキルを考えて選択し実施をすることになります。
どんなによい計画を立案していたとしてもその計画を共有し、参画意識を持たせ、合意を得ることができなければ、その計画は十分に実行されず絵に描いたモチになる可能性が高くなってしまいます。
3.まとめ
目標設定・目標共有のカテゴリーと並び、計画立案にも目標達成ができない原因が数多く潜んでいます。
しかし、管理者として計画立案のスキルを身につけ、計画立案が精度高く行うことができれば、目標達成できる確率が高まり、それは最終的には企業のビジョンの実現に近づいていくことができます。
管理者として計画立案ができるようになるよう、日々考え努力していきたいものです。