「管理者としての心構え」でも記載をしたように、管理者は「人を教える」という役割を持っています。私たちは生まれてから、そして学校生活においても、様々なことを誰かから教えられて育ってきています。しかし私たちは、「人を教えること」についてはほとんど教わることがなかったと言ってもいいのではないでしょうか。
しかし、そんな私たちが企業の管理者となった途端に、人を教えることがあなたの「役割」であると言われるのです。管理者の中に「私は教えることなんてできない」「どうやって教えたらいいか分からない」と言う方がいるのも、ある意味では自然のことと言えるかもしれません。
しかし「できない」「分からない」と言っているだけでは前に進まず、管理者の心構えでもあるように管理者は成すべき仕事や役割から目を背けてはいけません。管理者として良い仕事をするためには、何としても「人を教える」ということをできるようにしていく必要があります。
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1.担当者に仕事のやり方やスキルを教える
管理者は担当者に仕事のやり方やスキルを教える必要があります。あなたが上司や先輩から教えられたように、今度は管理者であるあなたが担当者や部下に仕事のやり方やスキルを教えていく必要があります。
しかし、このようなことを書くと違和感がある人も多いかもしれません。「私は誰からも仕事のやり方を教わっていないけど・・・」「誰も教えてくれなかったから、見よう見まねで自分で覚えたんだけど・・・」と言うかもしれません。確かにあなたはそうだったかもしれません。しかし、今管理者としてあなたが教育しなければいけない担当者や部下は、同じ方法を適用してもうまくいかない可能性があります。
では、なぜあなたが受けてきたやり方と同じ方法が適用できないのでしょうか?
1-1.時代が変わったのか?
管理者から聞かれる言葉で、担当者や部下が仕事に対する意欲がなかったり、仕事の覚えが悪かったりする時に、「今の若い人には必死さが無い」「仕事を覚えようと自ら動かない」という嘆きの言葉から始まり「我々の時とは時代が変わった」などという結論が聞かれることがあります。
しかし、本当にそうなのでしょうか?
思い起こしてもらえればと思いますが、いま管理者であるあなたが担当者と呼ばれる時、あなたの周りはあなたと同じように仕事に対して意欲的で、教育が不十分でも自ら率先して仕事を覚えよう、という人たちだけしか存在しなかったのでしょうか?決してそのようなことはなかったのではないかと思います。上司からの指示を待ち、言われたことしかやらず、新しい仕事に対して意欲を持って覚えようとしない人は、どの時代にも存在したのではないかと思います。
現在管理者として仕事をしている人に対して、間違いなく言えることが1つあります。それは、もちろん程度の差はありますが、あなたは周囲の同じような仕事をしている人に比べて、担当者としては相対的に優秀であるということです。担当者として優秀であるので、管理者の仕事を任されることになります。あなたの周りにはあなたと同じように仕事はできず、管理者の役割を任されることがない人も多数存在していたはずです。
だから、あなたが管理者として向き合っている担当者、すなわち仕事に対する意欲が感じられず、自ら仕事を覚えるために質問などもしてこない担当者というのはいつの時代にも存在していたことになります。時代が変わったのではないのです。
これは有名な話ですが、紀元前数千年という時代に描かれた古代エジプトの壁画には「最近の若い者は・・・」というような、その時代の若者の性質を嘆く言葉が記載されているそうです。一世代後の教育に悩みを抱えることは、古今東西ほとんど変わらないということではないでしょうか?
1-2.仕事の選択肢が多い
教育をするということに対しての悩みが昔から大きくは変わっていないとはいえ、現在管理者となっている人たちが担当者であった時と現在とでは、確かに全く同じではなく変化をしていることはあります。しかしその変化というのは、前述のように時代の流れなどという対応できない大きな変化ではなく、何が起きているかを理解すれば十分に対応できるものになります。
まず、2019年現在の主に20代~30代の人たちは、その世代の中でも違いはあるのですが、基本的には数十年前に比べて仕事の選択肢がとても多い時代に生きています。簡単に言うと、御社の担当者と呼ばれる皆さまは、御社で仕事をしなくても何かしらの仕事に就くことは困らないということです。また、現在はインターネット出現に端を発したビジネス環境の変化から、企業の平均寿命が明らかに短くなっており、働く側がずっとその会社で働きたいと思っていても、企業側の方が先に無くなってしまったりします。そのような観点からも、働く人が多くの選択肢を持ちたいと思うことは自然なことであるとも言えます。
よって、脇目も振らずに今の仕事に取り組み、何としてもこの仕事ができるようになっていくんだ、という意欲は以前に比べて自然と持ちづらくなります。今はスマホ片手に歩きながら転職情報を見たり面接の応募ができたりします。他の会社がどのような仕事をしているのか?給料はいくらなのか?という情報も、数十年前に比べたら格段に入手しやすくなっています。
このような観点を意識するだけでも、管理者として担当者との接し方が変わる人もいるかもしれません。いま目の前の担当者に会社に留まってもらい良い仕事をしてほしいと考える人は、管理者であるあなただけではなく実は多くの企業と競合している、ということになります。
1-3.仕事をすることの目的の多様化
仕事をする目的もまた数十年前に比べると多様性が増しています。数十年前は良い仕事ができるようになりたい、たくさんのお金を稼ぎたい、ということを考える人の割合は現在に比べると多かったと思います。しかし今は仕事はそこそこでプライベートの時間も充実させたい、ある程度生活に必要なお金を稼ぐことができれば、趣味とそのコミュニティに関わる時間をより大切にしたい、というような目的を持った人が増えていることは間違いないと思います。
「そのような甘いことを言っていて、仕事ができるようになるわけないだろ」と思う管理者もいるかもしれません。しかし、そのような価値観を「甘い」というように思ってしまうことは、現在の変化に取り残されてしまう可能性が高くなってしまいます。
人は他の人の価値観に影響を与えることはできるかもしれませんが、人の価値観そのものを直接変えることはできません。長い時間かけて形成されたその人の価値観は、お互いに尊重し、違いを認め、共存を図っていく必要があります(もちろん多くの管理者が持っている「仕事を優先して一生懸命やるべきだ」という価値観も、現在の若い世代から否定される筋合いも1つもありません)。
担当者や部下が仕事に対する目的をどう考えているか?どのような価値観を持っているのか?まずそれを知り、違いを認め、どうしたら管理者と担当者の価値観の共存を実現することができるのか、管理者は常にこの点とも向き合わなければなりません。
1-4.やる気がないのではない、やり方が分からないだけ
ここまでは、担当者の教育について数十年前と比べると難しくなっている、ということを書いてきました。ではこのような状況において、どうすれば担当者や部下の教育を行うことができるのでしょうか?
管理者が現在担当者教育において意識すべきことは、どのような仕事においても「やる気がないのではない、やり方が分からないだけなのだ」ということです。これは「行動科学マネジメント」という分野においても、基本とされる考え方の1つです。
確かに現在の若い世代の価値観は変化し多様化しています。しかし、みな人間であることに変わりはありません。人が持っている基本的な性質として、「誰かの役に立ちたい」「人に何かをして感謝をされたら嬉しい」「社会的に意義のある仕事をしたい」「今よりも少しでも良くなりたい」というものがあります。その人が育ってきた環境や学校での人間関係などの影響により、このような性質を表に出すことに消極的であったり拒んだりしてしまう人はいますが、根本的にはこのような性質を失っている人はいないと考えられます。
人は何かの仕事をする時に「この仕事をうまくやりたい」「しっかりと仕事をこなして上司やお客様に喜んでほしい」という思いは持っているのです。何かの仕事をしてうまくいかない時でも、失敗をしたくて失敗をする人はおらず(仮にそのように見えたとしても芯の部分ではそのようには思っていません)、迷惑をかけようと思って迷惑をかける人はいません。
だから、やる気がない人などいないのです。仕事ができないのは、ただそのやり方が分からないだけなのです。やり方は誰が教えるのでしょうか?それは管理者であるあなたが教えるのです。しかし担当者の仕事ぶりを見ていると、どうしてもやる気がないように見える時があります。その時はどうするのでしょうか?
それはやる気がないのではなく、なおやり方が分からないだけなのです。やはりそのやり方を教える役目を持っているのは管理者であるあなたです。しかし、それでも担当者の仕事ぶりが変わらず、やる気がないように思えます。その時はどうするのでしょうか?
やはりそれはやる気がないのではなく、さらにやり方が分からないだけなのです。ではどこまでいけば「この担当者はやる気がない」と判断していいのでしょうか?その答えは「やる気がないという判断をしてはいけない、100%やり方が分からないだけなのだという判断をする」ということです。
このように書くと「それはあまりにも極端なのではないか?」と思うかもしれません。確かにその通り極端なのです。しかし、現在管理者として仕事をしている多くの方が、担当者の仕事ぶりが思わしくないことに対して、その人のやる気がないことを理由にしてしまうタイミングが早すぎます。その判断をするタイミングを少し遅くしたとしても、さらにそれもタイミングが早すぎます。ではどこまで遅くすればいいのでしょうか?意識の中では、100%やる気がないという判断はしないということを決めれば、やる気がないという判断を下すタイミングが早くなることは絶対にありません。それだけ、現在の担当者や部下の教育環境はあなたが担当者として育った時とは変化をしているのです。
1-5.「やり方」とは具体的な行動で定義する
やり方を教えると書きましたが、では「やり方」とは何でしょうか?それは具体的な行動として定義することです。「頑張る」は具体的な行動ではありません。「しっかりやる」も具体的な行動ではありません。「このような感じでやる」も具体的な行動ではありません。
管理者は担当者や部下に「頑張って具体的にどのようにすればればいいのか」「しっかりやるとはどういった行動をすることを指すのか」「このような感じとは、何ができたらその感じを満たせるのか」を具体的に示す必要があります。同じようなことを何度も書きますが、いま管理者であるあなたが担当者の時には、このような曖昧な表現で教えられたとしても、それは何を意味するのか?を自ら考え具体化していったはずです。しかし、現在の多くの担当者が、そのようなことを自ら考察し行動を具体化していくことにあなたと比べて積極的ではありません。
しかしこれも前述したように、担当者や部下は根本的に仕事のやる気を失っているわけではないのです。管理者であるあなたが具体的に示した行動を実践することにより、仕事がうまくいき、上司やお客様に喜んでもらうことを繰り返していくと、人として本来持っている欲求が満たされていき、その人の考え方や価値観が良い方向に変わっていくきっかけになることは大いに考えられます。管理者はそのことを信じ、具体的なやり方を教えることを繰り返し行っていかなければなりません。
2.担当者を動機づけする
前項では管理者が担当者に対して仕事のやり方やスキルを教える、ということについて関連することを記載していきました。これに関連する内容だけでも数多くのことを身につけ実践していくことが必要ですが、管理者が担当者を教育することにおいて、仕事のやり方やスキルを教えるだけでは不十分です。
管理者は担当者や部下を、仕事に対して動機づけする必要があります。横文字を使えば「モチベートする」とか「モチベーションを持たせる」ということになります。ある仕事に対して同じやり方やスキルをもって取り組んだとしても、取り組む人の動機やモチベーションの度合いによって、その仕事の成果は時には2倍にもなるし、時には半分にもなります。
この現象は製造業の工場に配置されている機械やロボットでは、絶対に起こりえないことです。機械やロボットは、スイッチを入れればその機械やロボットに期待される成果を、ほぼ間違いなくアウトプットしてくれます。もちろん故障や不具合が起きることもありますのでその成果は減少することはあるかもしれませんが、常識的には減少したとしても大きく減少することはなく、ましてや今日はロボットの機嫌がよかったから2倍の成果をあげてきた、などということは普通は考えられません。
しかし、担当者や部下は人です。このような機械やロボットでは起こりえないようなことが、人では簡単に発生する可能性があります。同じ仕事でもどのような動機・精神状態・心持ち・感情で取り組むかによって、その成果は大きく異なります。
このことから、管理者は担当者に対して仕事に対して常に動機づけをすることが必要です。「この仕事は世の中の役に立っていて、多くの困っている人を助けることができる」「あの案件を成し遂げることによってお客様の大きな満足と信頼を頂くことができる」「今月の目標を達成することは、部下であるあなたの目指す方向性に対して成長に繋がっている」「今期の利益目標を達成することができれば、来期の報酬を大きく増やすことができる」。前述したように、担当者や部下の価値観は多様です。その担当者によって動機づけされる内容や言葉も変わってきます。
そして、管理者は担当者を動機づけする必要はありますが、強制してはいけません。また、担当者や部下は動機づけされることはあるかもしれませんが、強制されて意欲的に動くことはありません。それもまた機械やロボットと人の大きな違いです。人はどのような状態でその仕事に取り組むのかを、自分自身でスイッチを押し、自分自身でボリュームを回してその出力を決めるのです。誰かが代わりにスイッチを押し、ボリュームを回して出力を決めることは絶対にできません。
あなたは管理者として「私たちの仕事に意欲を持って取り組むといいよ」「そのプロジェクトをしっかりと成し遂げることは、あなたにとってとても素晴らしいことだと思うよ」「この技術や資格を取ることで、報酬も大きく増やすことができるよ」という内容のポジティブな動機づけを常に行う必要があります。そして担当者や部下が、その動機付けに影響されることを良しとして自ら動き出すまで、粘り強く動機づけを繰り返していくことが必要です。
3.担当者が今よりも良くなることを考える
管理者が担当者を教育するにおいて、また、管理者の心構えでも記載をした管理者と担当者との関係において、すべての基本となる考え方や姿勢は「担当者が今よりもどうしたら良くなるかを考える」ということです。これは、仕事のやり方を教えてできるようになってもらうとか、目標を達成するとか、そのような観点の上位をいくものになります。
現在あなたが管理者であり誰かを部下として持っているならば「○○さんが今よりも良くなるために、私は何をするべきなのか?」と自問してみてください。
ピーター・ドラッガーは著書の中で「管理者とはその企業内においては、担当者の「親」あるいは「教師」のような役割を持っている」と記載しています。子を持つ親であれば、子が仮に何の仕事をしていてどのような状態にあろうとも、今よりも良くなってほしい、と考えることは自然なことだと思います。生徒を持つ教師であれば、生徒が将来何の仕事に就こうとも、少しでも多くの知識と社会的なルールを身につけてほしいと願うのではないかと思います。
もちろん管理者は、担当者や部下の親や教師ではありません。しかし、担当者や部下は多くの事において管理者であるあなたの助けを必要としてます。企業内の「親」や「教師」となったつもりで担当者に接すると決めたならば、管理者としての意識や仕事ぶり、成果が変わるきっかけになるかもしれません。
4.管理者教育は教えるべきことを教え、そして立候補を待つ
管理者の中には、担当者教育という中に留まらず、次の管理者を育成する「管理者教育」を役割として持つ人がいます。担当者として仕事ができるようになるだけではなく、その担当者がさらに部下を持って管理者の役割を果たすことができるように教育するということです。
もちろん管理者であるあなたは、多くの場合は体系的な管理者教育を受けた上で管理者になっているのではないと思われます。仕事のやり方と同じように、管理者としてのやり方も見よう見まねでやってきている人も多いと思います。それを教育しようというのですから、これは担当者教育よりもさらに難易度は高くなります。
しかし、管理者教育もここまで書いてきた担当者教育と原則は同じです。そして、管理者の仕事はどのようなものなのか?ということは、この営業マネージャーの仕事と役割に記載をしてきた仕事がそれにあたりますので、次の管理者となってほしい人に対して具体的な内容を教えていくことも可能です。
しかし、担当者教育と管理者教育で1つだけ違うことがあります。それは、会社や組織に所属している担当者であれば、担当者としての仕事はできるようにならなければいけませんが、その全員が管理者の仕事ができるようにならなければいけないかというとそれは違います。管理者の仕事ができるようになりたいかどうかは立候補制であるということです。
ここまで記載をしてきて分かるように、管理者の仕事は膨大であり、やらなければいけないこと、身につけるべき考え方やスキル、そして持つべき責任もとても大きなものです。これを引き受けていくということについては、完全に自ら望んで取り組むべきものであり、決して強制されるものではありません。誰かから強制されて管理者になっても、行わなければいけない仕事量や学習量に圧倒されてしまうことでしょう。
もちろん管理者教育において、管理者は管理者となることの喜び、やりがい、メリット、1人ではなく組織で仕事を行うことの成果の大きさの可能性、人を育てることの素晴らしさ、等を伝えて大いに動機づけする必要があります。管理者の仕事の大変さや多さを嘆き、経営者との関係構築に苦心をしていることを吐露し、責任の重さにネガティブな発言を繰り返していたのでは、誰も管理者になりたいとは思えなくなってしまいます。
そして、その動機づけに良い影響を受け感化され、自ら管理者に挑戦したいと言って立候補してくる担当者を待つのです。その立候補者が出てこない、現れないということであれば、管理者であるあなたが普段から見せる管理者としての仕事ぶりや管理者を目指すことに対する動機づけの弱さが、立候補を妨げている可能性も考えらます。
5.まとめ
今回は「人を教える」ということの原則論を記載してきました。何度も書くことになりますが、あなたが管理者となった瞬間に「人を教える」という仕事は漏れなくセットで付いてきています。これを切り離すことはできません。
人を教えることが得意な人などほとんどいません。だから管理者の駆け出しのうちは人を教えることが下手くそでも、格好が悪くても良いのです。ベテランの管理者もみな同じようなことを間違いなく経験しています。
「人を教える」ということに逃げずに取り組もうという管理者にとって1つ良い話があります。それは、人を教えることに取り組むと、教わる人ではなく教える人が最も学ぶことができる、ということです。どのように伝えたら担当者が分かってもらえるのか?よくよく考えてみると自分はどうやってこの仕事をやっているのか?などを真剣に深く考えることになります。人を教えることに一生懸命取り組むと、実は自らが最も成長できるのです。
担当者や部下は企業内においては(場合によっては企業外においても)管理者であるあなたの助けを必要としています。担当者や部下の価値観を理解し、望む仕事のスキルや経験、成果を出していくことができるよう、管理者として常に考えて取り組んでいきましょう。